”共有地の悲劇”がないラボにするには

2. 解決策を待ち受けるさらなる問題

ではラボでそれぞれの解決策を採用した後どうなるか、について考えてみましょう。


A. その土地を私有地化、つまりスペースを個人に割り振る

スペース・設備が十分あれば、この解決策は実施可能でしょう。

しかし、不十分な場合や人やモノが増えてきた場合、

・公平な割り振りができない

・リソースが足りなくなっても増設ができないと、だれかの既得権を取り上げる必要が出てくる

既得権を手放すことへの抵抗が生じる
(いま保管しているサンプルや実験道具の置場所がなくなると困る・処分が面倒・今の場所を明け渡したくない、といった理由)

・個人スペースとして割り振られた範囲の外へのはみ出し

といった問題が出てくるのです。


B. 誰かが管理する

この方法もまた、いくつかの理由でうまくいかないことがあります。

<誰が管理しルールを守らせるのか>

共用試薬やスペースが多ければ多いほど、また人数が多くなるほど、全員がルールを守るよう徹底することが困難になります。ルールを作るとそれを守らせる人、教育する人が必要になります。それを誰が担うのか、という問題があります。

研究者は自分の研究時間を割いて何かするのは必要最小限にしたい。管理する側にも、される側にも回りたくない。できることなら管理部門や技術スタッフにやってもらって自分たちは研究に集中できる環境にしてほしい、と思っています。

<優先順位が低い>

研究者は”道徳心” がない、というよりも個人主義的で、自分の研究第一です。中にはメンテナンスの優先順位が低く、他人からみてどんなに散らかっていても転職や転勤イベントがあるか、真剣に困るまでは放置。
上司に言われたとしても(自分が管理職だったとしても)重要と認識していない(瑣末な)ルール、うるさく言われないルールは無視するか、または従わない。


<感覚の違い>

使い終わったら後片付けをする、というのは明文化されていないマナーのようなもの。「また明日使うからこのままでいいだろう」と結局ずっと占有状態にしてしまう人もいれば、毎回片付ける人もいる。毎回片付ける人はストレスを抱えがちになる。

占有状態にするのは「自分が次に実験するのに都合がいいから」であって、誰かに嫌がらせするため、ということは(滅多に)なく、自分の行いが他人に与える影響について思い至らないためなのですが、この感覚差が規範的な人にストレスを与えます。

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