研究者に特有の思い出の品が色々あります。
しかしモノを取っておけばおくほど、自分の研究に割く時間が減ります。管理や探し物に時間を取られるからです。
どんなものがあるのか、またどうやってそれらを整理したらいいか3つの方法をご紹介します。
例えばこんなものが研究者オフィスにはありがちです。
学会で首から下げていた名札
学位論文を製本したもの
学会誌や学会抄録
自分の論文の別刷り
自分の論文・原稿が載っている専門誌
学会でもらったボールペンや文具・カバンなど
他の研究者や研究指導者から贈呈された本・業績集や別刷り
読み込んで線を引いた跡がある論文コピー
学会発表用に作ったポスター
セミナーでもらった資料(レジュメ)
それから、研究者特有とは言えませんが、
パソコンの空き箱
ソフトウェアの箱
フロッピーディスク、MOドライブ、CD、USB、古いパソコン
なんてものも結構あります。
1. 自分にとっての重要度を考える
これらのものは、大事だと思うものとなんとなくとってあるものに分けられるかもしれません。
もし、オフィスが引っ越しすることになり、なるべく荷物を減らす必要に迫られたとしたら、どれを処分しますか。
例えば終わってしまった学会の名札は必要ですか。旅費精算が済んだら捨ててもいいのではないですか。捨てがたいのは学会の思い出を忘れたくないからでしょうか。それとも、名札フォルダーについている紐やケースを何かに使えると思うからでしょうか。一度でも取り出して使ったことがありますか?
私も昔は取っておきましたが結局使わないとわかったので全部捨てました。
人からもらった学位論文(立派に製本された、金文字で背表紙にタイトルが書いてあるようなもの)はいかがですか。
ただのコピー紙だったらリサイクルに回せるのに、製本してあるとなぜか捨てることに踏み切れなくなるのですね。
しかし私の同僚は転職して会社を出て行くとき、こういうものをごっそり捨てていました。その人は英語が得意だったので、論文のチェックを頼まれることが多かったようです。面倒をみてあげたお礼に、それらをプレゼントされたようです。
考えてみたら研究者にとっては人の業績などどうでも良いものの部類に入るのではないでしょうか。専門知識を得るために文献や本を読むことはしても、近い人の学位論文は大体知っている内容なので、何度も読み返したりしないでしょう。
退任する研究者の業績集も同じです。もらってもせいぜいパラパラめくって本棚に納めてそれで終わりではないですか。もらった人が退職する時にはそのまま置いておくわけにはいかないので、結局は処分されます。
私がお世話になった先生は、今まで面倒をみてきた各年度の卒業生についての思い出を一人ずつ数行の文章にして小冊子にし、還暦祝いの会で配っていました。先生の専門分野の業績はかなりあったはずですが、そんな業績集よりも、自分のことが書いてある本をあげた方が喜んでもらえると思ったのでしょう。何をもらって嬉しいかは人によるでしょうが、この時は大いに座が盛り上がりました。
2. 研究スペースを図書館化しないルールを決める
自分が書いた原稿や論文が載っている雑誌や別刷り。原稿自体はもちろん電子ファイルとして自分のパソコンかどこかに保存されているはずです。
そのジャーナルが良いものであればあるほど図書館に所蔵されているでしょう。
転職するときに別刷りを提出する必要がある、という話は聞いたことがありますが電子ジャーナルからのプリントアウトで十分ではないでしょうか。
それから、学会に入っていると毎月送られてくる学会誌。これを毎月じっくり読んでいる人はどのくらいいるでしょうか。忙しい研究者は人の論文を読むよりも自分の研究に専念しているのでは。読むのは興味のある特集記事が出ている時だけでは。
送られてくるものを全部取っておいたらいずれスペースがなくなります。埃もたまります。
本を取っておくのは図書館に任せ、研究スペースを図書館化しないようにルールを決めましょう。
例えば、取っておくのは1年分だけ、とか、新しい号が来たら古いのは捨てる。と決めてしまうのもいいでしょう。
3. 整理の時間をスケジュールに入れる
整理の時間を確保します。あらかじめスケジュールに時間を組み込んでおきます。
あなたのいる場所は未来永劫居られる場所ではないと思います。卒業したり転籍したり次の世代に研究を引き継いだり、退職したり転職したり、必ずどこかで変化があります。
いらないものを溜め込んでいればいるほど、そうした変化に対応するのが大変です。これから若くなることはありませんので、体力も落ちてきます。これからは自分にとって大事なことに時間を割くために、ものの整理をしておきましょう。
自分にとって大事ではないがなんとなくとっておいたものについて、今まで捨てられなかった理由を意識化してみると整理が進むようになります。溜めてしまった理由を自覚し、溜めないようにすると快適さが持続します。
日常生活の中に整理の時間を組み込むのがいいですが、なかなかできない場合が多いです。人間、面倒なことはやりたくないですし、大抵の研究者がやるべきことが多すぎて時間に追われていますから。しかし一度、十分な時間を取って不要なものを全て捨て切ってみると、気持ちもスッキリしてこれからの研究に前向きになります。
今まで後生大事にして来たものでも、捨てても後悔しないということがわかります。
あなたにとって大切でないものを捨てて、あなたの研究人生が実りのあるものになることを願っています。