前回の続きについて 教授のデスクが散らかっているのはなぜか?
少し詳しく解説をしていきます。
もし教授の仕事場が散らかっているとしたら、以下のような理由のどれか(または複数)が当てはまります。
- 倉庫がわりで仕事には使っていない
- 整理整頓や収納に興味がない
- とにかく忙しくて時間がないので後回し
- 整理する気力がない(どこから片付けたらいいかわからないくらいの状態)
- 整理の必要性を感じていない
- 整理しないことで存在感を示している
- 散らかっている方が落ち着く
- 創造性を発揮できる、新しいアイデアが湧く
1. 倉庫がわりで仕事には使っていない
倉庫なので、普段は使わないもの・使わなくなったものを置いています。見た目がどうであろうが、使わないものを置いているので仕事にはほとんど影響がありません。
中には家に持ち帰る方がいいようなもの、思い出の品に当たるようなものを研究室に置いている場合があります。避難所がわりとも言えます。
例えば、
- 家族に邪魔扱いされそうな趣味のもの、卒業生や訪問者からのプレゼントなど
- 子供関係のもの(昔、子供が書いた絵、使っていた人形、自分が買い与えた海外出張土産のおもちゃなど思い出のもの)
または、こういうものも。
- 自分では捨てられないもの。前任者のもの、誰のものかわからなくなっているもの、古いパソコンやプリンター、一人では動かしにくい大型の机、本棚、キャビネットなど。
2. 整理整頓や収納に興味がない
特別な興味はないけれど、相当使いにくくなってしまったからやむなく片付けを始める方もいらっしゃいます。しかし乗り気はしないまま最低限のものを横にどかすくらいなので、すぐに元どおりになってしまいます。
ある先生が、机で仕事がしづらくなったということで私に整理収納アドバイスを依頼されました。
しかし、次の一言にえっ、と思いました。
「整理するとスッキリするって、誰かそういう研究しているんですか」
研究者らしい質問にたじたじ・・・・ そこで一つ気づきました。
根本的にモノを整理整頓する作業には興味がない、そしてできることなら研究以外に時間を使いたくない、ということなんですね。
3. とにかく忙しくて時間がないので後回し
忙しくて時間がない。
忙しいのは確かにそうかもしれません。ただ、忙しくても整理の時間をスケジュールに入れていれば、だんだんに片付いてくるものです。
整理の優先順位が低い、プラス・後回しの習慣がついているところが散らかりの原因です。
4. 整理する気力がない(どこから片付けたらいいかわからないくらいの状態)
片付けたいとは思っているが、かなり積み上がってしまったから取り掛かるハードルが上がっている。
どこからやったらいいのかわからない。そういう状態です。
どれが大事で、どれが要らないものかの判断をする作業は結構大変です。ものを処分する手間もかかります。誰かに手伝ってもらえるならそのほうが片付けは捗るでしょう。
しかし、自分のことを理解していない人に自分のものの整理を任せられない、あるいは機密性の高いものの整理を信頼して任せられる人がいない、ということもあります。
5. 整理の必要性を感じていない
ご本人は感じていなくても、周りにいるサポーターの方たち(秘書さんや、周りの先生方)は困っているのに気づいていない。
医学部で良くあるのは、教授への新着の届けものを置く場所がなくて秘書さんが困っているケース。
新着の郵便物や書類がすでに山になっている書類の上に置かれていませんか?
秘書さんが直接手渡しにきたりしていませんか?
何かの締め切りに遅れたことはありませんか?
必要な時にすぐにものが取り出せなくなっていませんか?
これらに当てはまることがあるなら、整理した方がいい状態かも知れません。
6. 整理しないことで存在感を示している
既得権としてスペースを占有しておきたい・片付けるのが面倒になってそのまま、というパターンもあります。
しかし定年・転職・引越しのようなイベントでは片付けなくてはいけないので、大変な思いをして一人でやるか、誰かの手を借りることになります。
いずれにしろ、ほとんど使っていない場所に自分の身代わりとしてモノを置いている訳で、周囲の人からは「もったいない」「そこを空けてくれればもっと有効に使えるのに」と影で言われているかもしれません。
7. 散らかっているほうが落ち着く
確かにどういう状態が心地よいかは人それぞれで、9割の人から見て散らかっていてもご本人にとっては気にならない・快適レベル、というのはあるでしょう。
どんな状態が整っているかと感じるかということを”整然感覚”と呼んでいる方がいます(収納コンサルタント 飯田久恵さん)。
ただ、
整理したら大事なものを捨ててしまうんじゃないか
いつか必要になるんじゃないか
ものの配置が変わると覚えていられなくなるんじゃないか
という不安の表れである可能性もあります。
8. 創造性を発揮できる、新しいアイデアが湧く
こんな記事を見つけました。
天才の机は散らかっていた!混沌とした環境でこそ創造性は発揮される
ミネソタ大学のKathleen D. Vohs らによる原著論文の実験結果を引用して書かれています。
生産性を上げるとか、アイデアを実行に移すには秩序ある環境(つまり片付いた部屋)がよく、創造性を発揮するには散らかっている部屋の方が良い、と記事ではまとめられています。
しかし私の知る限りにおいては、教授は普段の仕事(特に創造性が必要なものではない)が忙しすぎ、部屋に積み上がる書類整理は後回しになり、やがてうんざりして整理する気力がなくなる、というケースがほとんど。教授の元には日々、使わないもの(特に郵便物を始めとする紙類)がどんどん入ってくるので、じわじわとスペースが埋まります。そのまま何もコントロールしないでいると仕事の生産性や効率が落ちるだけでなく、創造性を発揮するべき人間の居場所がなくなってしまいます。
まとめ
教授の机が散らかっているのはなぜか、というテーマについて考察してきました。散らかった状態が持続しているのには色々な理由があります。
今現在、研究や仕事が支障なくできる状態であれば、無理して片付ける必要はないです。ただ、放っておくと必ずものがたまります。片付けやすい仕組みを作っておくことで先生ご自身も、周囲のサポーターの方たちも、ストレス少なく快適に仕事ができます。何より、整理整頓することは、研究者として最も必要な”考える”時間を増やすことに役立つのです。