研究所の変革は問題が起きないと始まらないのか?

試薬管理システムが不要試薬廃棄につながる



こうしてリストを作ってからしばらくして試薬管理システムが稼働し始めました。このシステムは購買の発注と連動しているところが重要ポイント。試薬管理に登録し、法規制分類などを自分で入力しないと正式発注ができません。試薬が届くと物品購買管理部門でバーコードが発行され、試薬瓶に貼り付ける仕組みです。

その結果、全ての試薬に管理者がつくことになりました。保管場所の変更や廃棄登録は管理者が責任を持つ。社内で譲渡したら管理者を変更する。異動や退職の際には管理者を誰かに引き継ぐ。毎年全試薬の棚卸しも行われるようになりました。その際には瓶に貼られたバーコードを読み取っていけば棚卸しが完了するわけです。管理している試薬の量が少なければそれだけ棚卸し作業も楽なので、不要試薬を整理するモチベーションにもなっていたと思います。

このシステムを導入したことによる最大のメリットは、研究所内で試薬の貸し借りが容易になったこと。手持ちの試薬が足りなくなりそうな時や、新しい試薬を試しに少量使いたい時、誰か同じものを持っていないか検索ができ、誰に連絡すればいいかも明らかになりました。おそらく、研究費のコストダウンにもつながっていたでしょう。システムを維持管理する専門スタッフを雇用するコストやこのシステムを作った(おそらく外注で作ってもらった)会社との契約コストはあったはずですが、経済的コストを上回るメリットを会社経営者側は感じたのではないかと思います。