なぜ研究所の整理整頓が進まないのか?

「工場では整理整頓が進むのに、どうして研究所では上手くいかないのか。どこが違うんだろうか?」

先日、研究現場で働く方を対象とした講演会でお話した時、鋭いご質問をいただきました。

研究現場の特殊性はとても興味深いテーマです。

ご質問を頂いてからまた改めて考察し、講座の時にお答えした2つに加え、第三の特殊性を加えて書いて見ます。

1.  研究所は閉じた存在であること

2. 研究職は独自性が重んじられる職業であること

3. 研究者は研究以外のことに時間を割きたがらない

1. 研究所は閉じた存在であること

工場は取引先があり、顧客とのやり取りや他部署とのやり取りが必要です。そして汚く散らかった工場は社会的信用/製品の品質への信用に傷がつく、という基本認識がある。そのため、”外からの目”に耐えるように、整理整頓された状態を保つモチベーションがある。

一方、研究所は外とのやり取りが少ない ”閉じた存在” です。研究所の外からは”秘密”のベールに包まれているように見えています。

お客様への ”おもてなし” や、外部から見られることを前提とした ”見た目を美しく整えること” は研究所の中では重視されていない。

さらに、置いてある物品の使い道が当事者にしかわからないものも多く、事情をよく知った人でない限り指摘がしにくい。

内部の安全巡視で指摘できることは限界があり、明らかに安全面で問題があるものだけ。箱に入って実験台の下に置かれた不要なものも、長らく使われず埃をかぶった機械も、必要性や見た目について外からのチェックが入らない。

そのため、整理整頓の機会を意識して作らない限り、置いたままになる。

2. 研究職は独自性が重んじられる職業であること

研究者は、人と違うことをしたり、違う角度から考えて新しいものを生み出すのがミッションです。

そのため、人から言われたことをそのまま素直に受け入れず、一旦咀嚼して自分の頭で考える習性があるように思います。

講座参加者の方から、社内の電子ファイル名の命名ルールを決めるのに日付が先がいいか、実験番号が先がいいかで議論になった、という話を伺いました。細かいことでも「こうしよう」と言われたことに対し「自分ならこうする」と考え、なかなか意見を曲げないのも独自性の表れかもしれません。

整理整頓に関して誰かが決めたルールや方針に対して、重要性を理解せずまた整理整頓の効果について、やっても大したことがない・自分にとってはやる意味がない、と(独自に)判断すると、「協力する価値なし」という結論を導いてきます。

3. 研究者は研究以外のことに時間を割きたがらない

研究者は生まれ変わったらまた研究者になりたいと思っている。研究が好きな人が多い。そういう人にとって、自分のものならともかくとして、前にいた人が置いていったモノ整理のために自分の研究時間を使うのは苦痛。

自分のものの整理整頓がきちんとやれる人ほど、そう思うはず。

「自分がきちんとしていても褒められることがない」ばかりか、他人の置いていったものの整理をやらされるなど腹がたつことに違いない。

嫌なことをやらされる感があったら、整理が滞るのは必然です。

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以上、まとめますと

整理整頓が進まない原因としての研究現場の特殊性は、モノがたまりやすい要因が色々あることに加え、

1.  研究所は閉じた存在であること

2. 研究職は独自性が重んじられる職業であること

3. 研究者は研究以外のことに時間を割きたがらない

ではないかと私は考えています。

みなさんは、どう思われますか?